仏製フィルムノワール:密告者大集合
ちょっとここで、いろんな「密告者」をご紹介しておきます。
といっても、フランス語でいう密告者。

まずは無難なところから・・・

- un dénonciateur / une dénonciatrice
動詞は dénoncer
普通に聞こえてくる言葉ですね、これは。

- un indicateur / une indicatrice
動詞は indiquer ですが辞書を見ると「密告する」という意味では使われてないみたいですね。

- un délateur / un délatrice

- un espion / une espionne
いわゆる「スパイ」。動詞は espionner ですが、こちらも密告するよりも、実際に「人の動向を探る」という意味で使われています。


次はいわゆる俗語の類。

- un mouton
なぜ羊さんが密告者なんでしょう。もしかして、羊さんたちが群れたときのあの雲のような背中が敵にまぎれゆく「密告者」を連想させるからでしょうか。

- un mouchard
こちらは本来「(監房の扉の)のぞき穴」とか「監視装置」とかいう意味。
動詞は moucharder

- un donneur / une donneurse
動詞は donner

- une balance
こちらは女性形だけ。男もラ・バランス♪
動詞は balancer で「乱暴に投げ捨てる」「暴言をはく」という意味でも使います。
※捨て台詞を言う= balancer des mots
現代のTVドラマや映画などを観ていると、この balancer という言葉が一番よく聞こえてくるような気がします。


こうやって並べてみると「密告者」ひとつでいろんな言葉があるんですね。さすがレジスタンスの国(笑)。
最後の une balance ですが、80年代の映画にこの言葉がそのまま題名になった映画「La Balance」(邦題『愛しきは女、ラ・バランス』)がありますが、今回はちょっと時間切れ。
次はこの映画のことをちょっとだけ・・・
| 2007/02/12 - 20h | 仏製フィルムノワール | Comment (0) | この記事のURL |


仏製フィルムノワール作品リストアップ
amazon インスタントストアを利用して、仏製フィルムノワールの映画リストを作成しました。
本当はこういう形ではつくりたくなかったんですけど、このインスタントストアって映画(商品)のリストアップがとても簡単にできるんですよね。

題して、ねこの玉手箱 HORS-LA-LOI「法の外にいる者たち」
なんかすごいですねー。わくわくしますねー(笑)

作品リストはこれから増やしていきます。
また、作品個別のコメントもこれから時間をみつけつつ付けていきます。
もう一回見ないとコメント付けられないものもあるので。
問題は、要するにこの手の作品は昔のものが多いので「商品」として流通が終わったものが多く、リストの中に乗せられないものがけっこうあるんですよねえ。
その辺はこれからどうするか、これから考えていきます。

ご興味のある方はこちらからどうぞ↓
ねこの玉手箱 HORS-LA-LOI「法の外にいる者たち」

☆左の「liens(リンク集)」にもリンク貼っておきます。
| 2007/02/11 - 00h | 仏製フィルムノワール | Comment (0) | この記事のURL |


仏製フィルムノワール:帽子をかぶる密告者
先のエントリーの最後に書いたフレーズですが、答えをコメントに書こうとおもったのですが、これだけでひとつのエントリーいけそうなのでこちらに書くことにしました。

Si tu tires, assure-toi que la première balle soit la bonne.

直訳すると「もしお前が撃ったら、最初の弾はまちがいなくあたるぞ」と言ってるのですが、誰に弾があたるのか? ボクじゃなく、もちろん人質にです。ということは「お前が撃てば彼女は死ぬぞ」と言ってるわけで、この辺がフランス語の謎なのですが、普通 la bonne は“女中”の意味なのですが、この場合の bonne は紛れもなく形容詞。「最初の弾は女中だ」だと意味が通りませんからね。真剣勝負なときにいきなりこんなこと言われちゃあ、コメディかとおもっちゃいますし。
おそらく la bonne direction (正しい方向)の略で、 direction chemin route と同様。だからこの場合も la bonne だけで、あえて la bonne direction と全部言わなくてもフランス人にはわかっちゃう暗黙の了解といった感じでしょうか。(・・と推測。もし違うよとおっしゃる方がいたらぜひご連絡ください)

(追記1)コメント投稿いただきました。
別訳で「もし発砲するんなら、最初の弾が狙い通りに飛ぶようにちゃんと撃てよ」という訳もありです。というか、もしかしたらこちらの方が正しい解釈かもしれません。(詳しくはコメントをどうぞ。Bさん、ありがとうございました。)

さらにこのフレーズの中でおもしろいのは、彼女に必ずあたるから「assure-toi 安心しろ」とまで言ってるわけです。こわいですねー。こんな脅し文句、聞いたらうれしくなっちゃいますね。

(追記2)↑これに関してはわたしの早とちり&誤訳でした。
assure-toi は「確かめろよ」という意味になり、
「安心しろよ」は 正確には rassure-toi です。
s'assurerse rassurer の違いですね。
あーフランス語ってややこしいわー(笑)
間違いも勉強のうち。間違えたままエントリー残しますので、皆さんはこのような間違いをなさらぬように。


密告ついで脅し文句ついでですが、先の『勝手にしやがれ』にも出てきたジャン=ピエール・メルヴィルの映画に『いぬ』というのがあって、たぶん有名なので知ってる方も多いとおもいますが、この映画のなかでも、ジャン=ポール・ベルモンドが、やさ〜しく甘〜い言葉をかけながら女を白状させるシーンがあって、これなかなかすごいです。わたしはこの場面がこの映画の見せ場だとおもっとります。

Vos yeux, Morice a eu de la chance. 君の瞳はどうのこうのとか言っておきながら・・・

ピシ!(平手打1回)
ボカ!(拳固殴1回)

続いて・・・

Chère madame, vous êtes bien sage et de me donner l'adresse de Monrice et de son travail. Et si vous êtes décidé, faites vos signes. 奥さん、おとなしくあいつの仕事場をおしえなさい、言いたくなったら合図してねとか言っておきながら・・・

ピシ!パシ!ピシ!(平手打3回)

そして女はこうなってしまう・・・
Le doulos

そしてとどめの甘い一言。

Maintenant chère petite madame, soyez raisonable et surtout ne criez pas. かわいい奥さんよ、いうことを聞くんだ、そして、大声なんか出しちゃいけないよ・・・


最後に、この映画の冒頭に出てくるクレジットをのせておきます。
ゴシック風な文字でかっこいいです。まるでゴダールみたい。というか、ゴシック文字をどどんと出す様式は、メルヴィルが最初か?

EN ARGOT, "DOULOS" VEUT DIRE "CHAPEAU".
MAIS, DANS LE LANGAGE SECRET DES POLICIERS ET DES HORS-LA-LOI, "DOULOS" EST LE NOM QUE L'ON DONNE A CELUI "QUI EN PORTE UN"...
L'INDICATEUR DE POLICE.


俗語で“デュロス”とは“帽子”のことである。
しかし、警察とならず者たち間の隠語では、この帽子をかぶる者を“デュロス”と呼ぶ。
警察への密告者(いぬ)のことである。(※字幕+試訳)
| 2007/02/10 - 00h | 仏製フィルムノワール | Comment (2) | この記事のURL |


仏製フィルムノワール:愛する女に気をつけろ
密告ネタが続きます。

ヌーヴェル・ヴァーグとフィルムノワールって、一見関係がないように見えて実はけっこうあって、仏製フィルムノワールの大御所ジャン=ピエール・メルヴィルは、ヌーヴェル・ヴァーグの先駆けの作家でもあったと某書籍にも書いてあったりするわけですが、このメルヴィルの影響を強く受けている作家(というかお仲間?)があのゴダール爺さんだったりして二度びっくりしちゃうわけ。

この辺の関係性はわたしの頭ではうまく説明できないのですが、要するに「新しい波」が来るまえにはアメリカのパルプ・フィクションの影響もあったということなのかな。
ゴダールの映画で、もうこの映画知らない人はいないだろうくらいに有名な『勝手にしやがれ』なんかでは、ジーン・セバーグ演じるパトリシアが空港でインタビューするのが、実は作家に扮した本物のジャン=ピエール・メルヴィルだったりして、ゴダール爺さん、自分の映画にメルヴィルをこっそり登場させてるところは憎いね。
わたしなんか、最初見たとき誰あのおっさん?て、映画観終わったらすっかり記憶をなくしてた。あれがメルヴィルだと知ったのはもう何年も経ってからで、やっぱり映画は何度も繰り返して観なきゃだめ。

A bout de souffleまたこの映画は、警官を殺して指名手配されている男ミシェルが、自分の女に「密告」されて最期を終える。
好きな女から裏切られた男はもう逃げる気力もなくなるほど嫌になっちゃう。一番用心すべきは愛する女ということか。ぼろきれのようにくたくたになって走りきったところで倒れて死んじゃうあたり、この映画がいかにフィルムノワールを意識して作られているかわかろうというもの。

で、このベルモンドの女になるパトリシアなんだけど、実は女のわたしでもよくわからない女なのよ。
「愛してたとおもってたけど良く考えてみたら愛してなかった」みたいなこと言って、最後は男から Déguelasse よばわりされる。同じ女として、あんたそれでいいの?と、何度おもったことか。

せっかくのフランス語ブログなので、ここで慣用句というか、犯罪映画大好きなわたしたちがよく耳にするフレーズをひとつだけ書いておきます。
映画の冒頭で、ベルモンドが警官を殺してしまう場面で聞こえてくる台詞。

Ne bouge pas ou je te brûle !

訳すと「動くと撃つぞ!」と言ってるわけですが、この台詞をしゃべるのがバイクに乗った警官。でも警察の人間はこんなこと口では言ってもそうおめおめと引き金引くわけないので、実際に殺されちゃうのは警官の方なんだけど、このフレーズの真ん中にある「ou」は、命令形のあとに来ると「sinon(さもなくば)」の意味になる。
だから正確に言えば「動くな、さもなけば撃つぞ」となるわけで、実はわたし、この文法はこの映画を観てはじめて知ったわけで映画ってとてもお勉強になりますね。

ついでだから、このフレーズの「類文」をあげときます。

- On ne bouge pas ou je tire !
- Bouge pas ou je tire !
- Ne bouge pas ou je te bute !

これすべて同じ意味です。
順番からいって、下にいくほどだんだん言葉遣いがやばくなってくるかなって感じ。
最後の台詞に使われている 「buter(殺す)」って言葉は、今のTVドラマや映画を観ていると本当によく聞こえてくる言葉で、本当に用心しないとおもわず使っちゃいそう。

それともうひとつ。このあいだTVドラマ見てたら聞こえてきた台詞。
簡単に状況を説明するとこんな感じ。

犯罪を犯した男が警官に追われている。刑事に拳銃を向けられた男は窮地に追い込まれ、思わずそばにいた人間を人質にとってしまう。そして持っていた拳銃を彼女の頭に突き付けてこういう。

Si tu tires, assure-toi que la première balle soit la bonne.

さて、そのココロは(笑)?

つづきを読む
| 2007/02/01 - 01h | 仏製フィルムノワール | Comment (0) | この記事のURL |


仏製フィルムノワール:裏切りに技あり
フランス語はほぼ毎日のように接しているので、ここに書くこともたくさんあるようなのだがその実、改まって書こうとおもうとなかなかできない。
メモ書き程度の気づきは山ほどあって、それをちまちま書いていたらなんだかとりとめのないものになりそうだし(そもそもブログとはそういうものかもしれないが)、フランス語ネタだけでうまい具合いくかなというブログ立ち上げ当初のもくろみはなかなか達せず。いろいろ考えた結果、今年はちょっとテーマを決めて書いてみることにしました。

とりあえず最初は「仏製フィルムノワール」

わたしの好みをよく知ってる人は「きたか」とおもう人もいるかもしれませんが、そうです。きました。
普通フィルムノワールというと、32年の『暗黒街の顔役』を源流に40年代後半から50年代前半の、見ようによっては救いようのない退廃的な傾向のアメリカの犯罪映画のことを指すのですが(詳しくはこちら)、ここではそんなアメリカ映画のこと書くわけないので、ノワールはノワールでもこちらはフランス発フィルムノワールを中心に、製作年にこだわらず新旧とりあわせて、またフィルムノワールの定義にもこだわらず、言葉や映画の紹介、雑感、その他もろもろ、わたしの独断と偏見でくんずほぐれつ書いていきます。

まずは、わたしがおもうフィルムノワールの第一要素。「密告」

密告とは裏切りのこと。俗にいうチクリです。
今まで信じていた奴に裏切られる。仲間だとおもっていた奴が実は警察のいぬだった。私利私欲のために、または自分の身を案じて敵に寝返る。
女子供・ヤクザ・サラリーマン・人種国籍関係なく、人生長い間生きてきて人から裏切られることほど屈辱的なことはありません。
この「密告」を要素に入れた映画はおもいのほかたくさんあって、あのTVドラマ「24」でさえも話の核は密告です。登場人物みんな気のいい奴だったら「24」はいくらタイムリーな展開であったとしてもぜんぜんおもしろくないでしょう。誰が裏切り者か。それを知ったときの驚き。まさかあいつが!?という愉しみ。
「密告」は、話の展開を裏切ると同時に、観ているわたしたちをも裏切ってくれます。
これが快楽でなくて何が映画か。ちくしょう、あいつに裏切られた。こんな悔しい思いなくて人は大きくなれません。

Le corbeau afficheところで、フランス映画に『密告』という名そのまんまの題名の映画があります。
43年のアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの映画です。
ですがその題名にもかかわらずこの映画はフィルムノワールではありません(おい)
クルーゾーですからね。どちらかというとサスペンスに近いです。それもこの映画のなかでチクる奴は、裏切りというよりむしろ暴露に近く、あらゆる人に手紙を出して、とある人の中傷をしまくります。送られてくる手紙のその数たるや毎日何通もで、見ようによってはいささか陽気なチクリともいえなくもない。
果たしてこの題名の意味するものは?

この映画の原題は「LE CORBEAU(カラス)」
送られた手紙のサインに“カラス”とあったのでこの題名がついているのですが、フランス語で「カラス」には密告の意味はなく、むしろ、その黒く不気味な姿から連想して「不幸・死」を表わします。
つまりこの映画は、密告=裏切りを描いた映画ではなく、人の成功をねたんだ人間が、その人を不幸に陥れようと「よからぬ噂」をばらまいた人間の意地悪な面を描いた映画。
人間のねたみや、村や小さな町にありがちな噂で固められた不実、ゆがめられた真実。
人はかくもこう哀しく生きられるものか。アンリ=ジョルジュ・クルーゾーならではのテーマですね。『情婦マノン』や『恐怖の報酬』のラストが目に浮かびます。

ちなみにこの映画、冒頭はこういう言葉ではじまります。
Une petite ville, ici ou ailleurs...
“どこにでもある小さな町…”と字幕がついていました。うまい訳だとおもいます。
つまりこの映画で描かれていることは時代をこえた普遍的な意味合いが強く、どこでも起こりうるお話だということですね。

「仏製フィルムノワール」初のエントリー。
ノワールな映画ではない映画の紹介からはじまりましたね。出だしは好調。こうやって皆さんの期待を裏切りながらフェイントかましつつやっていきますのでよろしくお願いします。
| 2007/01/29 - 14h | 仏製フィルムノワール | Comment (0) | この記事のURL |


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